【ニューヨーク=吉田圭織】米製薬大手モデルナは4日、バイオスタートアップのオリシロジェノミクス(東京・文京)を買収すると発表した。買収により日本での存在感を高めるとともに、mRNA医薬品の開発を加速する。買収額は8500万ドル(約110億円)。モデルナのステファン・バンセル最高経営責任者(CEO)によると、買収手続きは数週間以内に完了する見通し。日本でのさらなる採用拡大にも意欲を示した。オリシロジェノミクスは立教大学の末次正幸教授の研究成果をもとに2018年に設立された。一般的にDNAを人工的に合成するには大腸菌などの細胞を使う必要があるが、オリシロは細胞を使わずにDNAを合成・増幅できる技術を持つ。オリシロには、旭化成メディカルや東京大学エッジキャピタルパートナーズ(UTEC)などが出資している。mRNAを合成するには、最初に標的の遺伝子に合わせたDNAを合成する必要がある。モデルナはオリシロの技術を活用することで、mRNAの合成にかかる時間も短縮できるとみている。例えば新型コロナウイルスのオミクロン型の派生型「BA.5」に対応したワクチン製造には8週間かかるが、同社の技術を活用すると6週間に削減できるとみている。バンセル氏は「mRNAの製造スピードが上がるため、(がんワクチンや希少疾患向け治療など)開発中の全製品に寄与するだろう」と語った。