【この記事のポイント】・「低稼働」の6割以上が国公立や大学病院・病床使用率、都道府県平均を大きく下回る・資金負担のない自治体が病床上積みを優先新型コロナウイルス患者用の病床に支払う国の補助金が実績の伴わない病院にもつぎ込まれている。日本経済新聞の調べによると、感染ピーク時の病床使用率が都道府県平均を大きく下回った404病院に2年間で3660億円超を交付していた。6割超は国公立・大学病院だった。資金負担のない自治体が病床上積みを強く求めた結果、見せかけの専用病床が大量発生するとともに病院が潤う矛盾が生じている。実態欠く確保数、積み上げを優先国は2020年度、コロナ患者の入院に備えて病床を空けた場合に「病床確保料」を出す制度を設けた。設備・人員配置の都合で休止する病床も対象になる。病床の種類に応じ、1床につき1日最大7万4千円~43万6千円。国が全額負担し、20~21年度で3兆円を交付した。だが補助金効果は不十分だ。ある東京都幹部は明かす。「病床数の積み上げが最優先。稼働できるかは二の次だった」。21年夏の第5波では都立病院で2千床を確保したとしていたが、入院は最大時で1425人。この前後は都内で100~500人の入院先が決まっていなかった。都立病院の状況は一例にすぎない。かねて補助金を得ながら患者を受け入れない「幽霊病床」の存在が指摘されたが、厚生労働省医政局は「病床確保に苦労する中で補助要件の厳格化は難しかった」という。ようやく22年1月に病床使用率が都道府県平均の7割未満の病院は減額する基準を導入した。日経は全都道府県に個別病院が受け取った病床確保料と第3~6波それぞれのピーク日の使用率が分かる資料を請求。複数の有識者の助言を得ながら、計4回のピークのうち国の基準を2回以上満たさなかった病院を「低稼働」と評価した。病院の2割、使用率平均を大幅に下回る稼働状況を開示した44都府県の約2千病院(東京都は国公立のみ)を分析すると2割の404病院が低稼働だった。うち病床確保料がわかった383病院への交付額は計3667億円だった。最も多いのが公立の158病院で39%を占めた。日本赤十字社や済生会など公的病院、国立、大学病院を合わせると66%。いずれも12月に成立した改正感染症法で医療提供を義務づけた。東京都では都立14病院のうち小児科や神経系を含む5病院の稼働率が低かった。都立病院機構は「病院ごとにピークは違う。補助金は稼働できる病床のみ申請した」とするが、それでも病床使用率が低い例があった。都立は確保料908億円を得た。費用対効果や医療体制、吟味せず日本は人口あたり病床数が世界首位なのに医療逼迫を繰り返す。役割分担せずに病院が乱立し、医療人材や設備が分散していることが背景にある。病床だけ増やしても限界があるのに、自治体は補助金を負担しないため、費用対効果や医療体制を吟味せずに上積みを求める形となった。埼玉県にある300床規模の公的病院は70床確保を県から求められた。院長は「そもそも無理だった」という。全病床の半分を閉鎖して人材を集める必要があり、稼働できたのは45床が精いっぱいだった。第4、6波の使用率は30%台にとどまった。病院経営は好決算が相次いだ。特に公立は赤字続きだったが、補助金効果で黒字転換した例が多かった。学習院大の鈴木亘教授は「補助金に見合う受け入れ数でなければ返還させ、都道府県にも一定の負担を求めるべきだ」と指摘する。地域のコロナ治療を担う拠点と通常医療の拠点を分け、スタッフを再配置すれば病床を効率よく運用できるようになる。地域の医療資源を再編する議論も欠かせない。
2002年10月25日ディープステート官僚を調査して暗殺される