厚生労働省が28日に開催した薬事・食品衛生審議会要指導・一般用医薬品部会において肥満を対象とした大正製薬の「アライ」(成分名=オルリスタット)の要指導医薬品としての承認が了承された。同剤は、国内では医療用医薬品としての使用実績がない「ダイレクトOTC」で、国内初のOTCの肥満薬。承認は来年3月末の見込みで、2019年3月の申請から4年越しでの承認となる。●ダイレクトOTCとして来年3月末に承認見込み オルリスタットは消化管の中でリパーゼを不活性化し、食事由来の脂質の体内吸収を抑制するリパーゼ阻害薬。スイス・ロシュが開発し、医療用医薬品として欧米100カ国以上で、OTCとして欧米70カ国以上で承認されている。国内では大正製薬が09年にグラクソ・スミスクラインの子会社から導入し、開発を進めてきた。日本人を対象とした臨床試験では、内臓脂肪面積変化率やウエスト周囲長変化率をプラセボ比較で有意に改善させた。 効能・効果は「腹部が太めな人の内臓脂肪および腹囲の減少(生活習慣改善の取り組みを行っている場合に限る)」。「腹部が太め」の基準は腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上とする。投与対象は18歳以上の健康障害を伴わない肥満の人間で、運動や食事療養といった生活習慣改善の取り組みと併せて、内臓脂肪や腹囲を減少させるための補助的な位置付けとして使用する。 副作用として便を伴う放屁や脂の漏れなど、薬理作用に由来すると考えられる消化器症状がある。部会ではそうした点を薬剤師が購入者にどう説明すれば良いのか、という意見も出たが、全体の議論として承認そのものは了承された。ダイレクトOTCとして23年3月末に承認される見通しで、肥満に対して補助的に使用されるOTCは国内初となる。●対象者の選択と適正使用確保が難しかった 厚労省によると、アライの承認申請は19年3月。審査に時間を要した理由について「いかに対象者を適切に選択するか、適正使用をどう確保するかが難しい品目で、それらを検討するのに時間がかかった」と説明した。薬剤の性質上、本来投与の必要がない人も服薬するリスクがあるため、慎重な審査が行われた。 大正製薬は「導入当初からOTCとしての開発を念頭に置いていたのか。医療用として開発しなかった理由は」との日刊薬業の取材に対して「戦略に関わる事項のため、回答は控える」とした。●医療用「オブリーン」は承認取得も収載されず リパーゼ阻害薬では、武田薬品工業が13年に「オブリーン」(一般名=セチリスタット)の医療用医薬品としての承認を取得した。当初中医協に示された資料では、発売10年度目のピーク時予測が患者数28万人、販売額140億円だった。ただ、その中医協において、心血管疾患リスクの低減などのデータが提出されない状態で体重減少の有効性のデータだけが示されたことを問題視する意見が委員から相次いだ。運動などで治療できる肥満に対して公的保険を適用することにも否定的な見方が集まり、結局薬価収載されなかった。 同日の部会ではサノフィの抗アレルギー薬「アレグラFXプレミアム」(成分名=フェキソフェナジン塩酸塩・塩酸プソイドエフェドリン)の要指導医薬品としての承認も了承された。同薬は「ディレグラ」のスイッチOTC。
脂溶性ビタミンも体外に排泄される事による副作用懸念