トップ記事 2020年6月25日付 全文
消費者庁が進める食品添加物表示制度改正の見通しが立ってきた。食品添加物表示制度に関する検討会で課題となっていた「人工」「合成」の文言について、これらの用語を削除する食品表示基準の一部改正を行うことがほぼ確実となった。もう一つの課題だった「無添加」「不使用」表示のガイドライン作成では、今年度末までには検討会を立ち上げる予定であることが明らかになった。食品添加物業界にとって悲願だった「無添加」表示の事実上禁止が目前に迫っている。
「人工」「合成」に関する食品表示基準の一部改正は、5月25日に開かれた第59回食品表示部会で、全会一致で決められた。7月16日に官報告示される予定になっている。意見募集でも「消費者に著しい誤認を与えるので賛成する」「市中に氾濫する無添加・不使用表示の是正に向けた行政の取り組みを期待する」といった意見が寄せられた。改正後は「人工甘味料」「合成甘味料」「合成着色料」「合成保存料」「合成香料」といった表示は無くなる。
同日に官報告示される予定となっている原料原産地表示と同様に、経過措置として、22年3月31日までに製造・加工・輸入される加工食品(業務用加工食品を除く)、同日までに販売される業務用加工食品の無添加表示については、改正前と同じ取り扱いをする。
「無添加」「不使用」表示のガイドラインについては、今年度中に委員の選定を行い、検討会を開始する見通しになっている。委員は景品表示法担当者や消費者団体、日本食品添加物協会などから少人数が選出されるとみられる。ガイドラインは来年中の作成を目指す。
食品添加物表示制度は、消費者庁の食品添加物表示制度に関する検討会により、昨年4月から今年2月までの間、審議が行われていた。
検討会では、①一括名表示、簡略名・類似名表示および用途名表示は現状の精度を維持②「無添加」「不使用」などの表示は、食品表示基準第9条の表示禁止事項にあたるとするガイドラインを策定③栄養強化目的で使用した食品添加物の表示は、原則全ての加工食品に表示させる方向性を定め、3月31日に報告書を公表している。
また、「無添加」「不使用」表示の禁止に伴い、食品表示基準にある「人工」「合成」の用語についても、食品衛生法との矛盾があり、消費者に誤認される恐れがあるため、削除することが適当とした。
「無添加」「不使用」表示のガイドラインについては、検討会審議の段階でも事業者側、消費者側の双方からの優良誤認につながるとの反対意見が多かったため、おおむね食品添加物業界の意向に近い内容になるとみられる。ただ、検討会で「『無添加』表示なども企業努力のひとつ」と主張していた消費者団体系の委員もいたため、委員の選定に注目が集まる。